女装ブログ・小説
羨望の狂気・穢される美人〜木下ちゃん〜

細く高い漆黒のハイヒールが、彼女の足元に静かに咲いていた。つい先日まではスニーカーで街を駆けていたはずのその足が、今は数センチ高い場所で新しい景色を捉えようとしている。
「似合うかな」
そんな不安げな目線が、ふと鏡に向けられるたび、どこか胸を打たれる。彼女は気づいていない。ピンヒールの出立ちの彼女は凛とした線が浮かび上がり‥とても美しかった。
ワンピースは、深いネイビーに控えめなレースがあしらわれたもの。肩の線にそってしなやかに流れ、体の輪郭にそっと寄り添う。生地の質感とシルエットが、彼女の魅力をいっそう引き立てていた。
声高に何かを主張するのではなく、ただそこに佇むだけで目を引く人がいる。今日の彼女は、まさにそうだった。
彼女は静かに腰を下ろす。
空気が少し揺れる。
足元には艶を帯びた黒のハイヒール。
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